【雑感】FIRE 勝ち組 / 負け組

株式市場が活況なためか、
FIRE関連の記事が増えている気がする。

 

そして、相も変わらず、偏りのある記事が多い。
(それでもつい読んでしまう…)

 

kunco.hatenablog.jp

 

 

 

「FIREなんて負け組ですよ」という記事(*1)を読んだ。

 

人生に「勝ち組」と「負け組」があり、
それを第3者が判断する。
うんざりする内容の記事だった。
(記事内では、FIREをした人が自分自身ことを「負け組」描写していたが)

 

早期退職の話をすると、
「いいなー、人生勝ち組で。」と言われることあれば、
「仕事しないで何してるの?暇じゃない?」
「自分には耐えられないわ。」と負け組扱い(?)されることもある。

 

記事のように私の人生が「評価(負け組扱い)」されているなと感じることはある。
(早期退職していることを大々的に伝えていないので、その機会は少ないけど)

 

同時に、友人がうらやんできた場合、
「いや、社会に適合できなかっただけだよ。
会社でバリバリ働いている〇〇(相手)が羨ましいよ。」
と自分を卑下してしまうことも多い。

 

建前でもあり、本音でもあるから悩ましい。

 

羨ましいなって思うような生活をしている知人でも、
周りに早期退職したことを伝えていない人もいる。

 

妬まれたりするかもしれないし、
大っぴらに「自由(FIRE)を謳歌している」ことを見せる人は少ないのではないのか。

 

レストランや商品のレビューと同様、
早期退職した後の生活を公開する人は少数派だ。
そんな特殊な方々の意見を全体の意見として扱うのはどうかと思う。

 

勝ち組か負け組かは他人が決めることでもないし、
どんな選択(働いても、辞めても)をしても「絶対安泰」であることはない。

 

だからこそ、自分で「選ぶ」ことが大事で、
選んだからこそ、その結果を「受けいれる」ことができると思う。

 

 

どんな選択をするにせよ、納得できる人生をおくりたい。

 

安易にFIREを薦めたり、否定する記事に辟易しながらも、
FIRE関連の記事読んでしまう悪癖をそろそろやめたい。

 

 

 

【参照記事】

「FIREなんて負け組ですよ」新NISA×好相場→2000万円早期退職をプロが検証

 

 

株や投資信託で資産を増やし、資産数千万円で会社を脱出する人たち。ミニマムな暮らしと、やりたいことの両立──理想的に思えるが、現実はどうか。AERA 2024年2月19日号より。

 

*  *  *

 

 2024年の株式市場は国内外ともに活況だ。そんな相場の波に乗り、資産を大きく増やした会社員投資家の間で再び「FIRE(Financial Independence,Retire Early=経済的自立と早期退職)宣言」が目立つ。

 

 FIREといえば1億円というイメージがあったが、ここ最近のSNSを見ると金額のハードルが下がっている。資産2千万円台で「3千万円の目標には少し早いですが、FIREします」という人も存在する。「理想は3千万円。2千万円台でも、まあOK」の雰囲気がある。

 

資産2千万~3千万円に対して年率平均5%程度の上昇を見込んでいる様子。必要に応じて、少しずつ引き出すことも考える。

 

■週2~3回好きな仕事

 資産は保有しながら週2~3回など、自分のペースで好きな仕事をする(やりたいことの実現)。会社員時代の収入をキープしたいという雰囲気はなく、起業して大金を稼ごうという鼻息の荒さも感じられない。

 

 2千万円という「早期退職時点の資産」は、今年から始まった新NISAの満枠1800万円に近い水準。新NISAが始まり相場がいいこともFIRE宣言の増加に影響しているかもしれない。新NISAでは利益の税金約20%が非課税。うまく使えば運用効率がアップする。

 

 ファイナンシャルプランナーの横田健一さんに実情を聞くと、「資産数千万円で勤務先を早期退職する人は、もともと生活にお金を使わない傾向が強い」という。いわゆる「ミニマムでシンプルな暮らし方」。

 

「実際に資産数千万円で会社を辞めた方(独身)の実例を挙げると、まず年間の食費は、外食も含めて10万円台前半でした」

 

 10万円は月ではなく「年」である、念のため。

 

「住居費(賃貸)は水道光熱費なども合わせて年間50万円台。逆算すると家賃3万~4万円の物件に住んでいました」

 

 当然ながら、東京の山手線の内側には住まない。

 

「いずれも年で、被服費4万円、交通費2万円、交際費1万円台、日用品9万円、医療費5万円台、通信費2万円台、社会保障費45万円、娯楽29万円、税金ゼロ。年間約170万円の支出です」

 

 

■高齢者無職世帯の仲間

 このケースは独身だが、それぞれの世帯の形に合った早期退職後の人生設計は、どう考えればいいか。ミニマムではない方向で、夫婦2人なら?

 

「まず出ていくお金、生活費から整理しましょう。総務省の家計調査(2022年)によれば、毎月の生活費が60代夫婦で約28万円、70代で約24万円、80代以上で約20万円でした。定年退職後の生活を前倒しにするわけですから、高齢者無職世帯の数字を参考にします。自由に少しは働くにしても、この層に早めの仲間入りをするわけなので」

 

 早期退職の年齢により、年金の金額が変わることにも注意。

 

「『ねんきんネット』で自分の年金額を試算してください」

 

 

小さな子どもがいる人は、子育て費用や学費もかかる。

 

 気になるのは「増やすお金」の部分。よく見かける、「年平均5%で増える見込み」というリターン予測は現実的か?

 

「全世界株式のインデックス投資信託を保有していると仮定すると、年換算で5%ずつ増える見通しは問題なさそうです。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、外国株式の期待リターンを7.2%と推計しています。JPモルガンの超長期予測(24年版、円ベース)では世界株式5.2%という記載が見られます。ただ、預金のように『毎年決まって5%ずつ増える』わけではありません。引き出すときの相場次第で最終リターンは大きく変わります」

 

■20年後の残高検証

 そこで過去の相場データを使った検証を、ニッセイ基礎研究所主任研究員の前山裕亮さんに頼んだ。1989年に会社を辞めたとして、その時点の評価額が2千万円なら年120万円、3千万円なら年180万円を引き出し続ける。20年後の2009年に資産はいくら残っていたか? S&P500と全世界株式でそれぞれ計算。同じ要領で、90年引き出し開始、91年引き出し開始……と、直近で「03年開始・20年後は23年」まで、15パターンの検証結果が出た。

 

「一番よかったのは94年引き出し開始です。当初2千万円のS&P500は年120万円ずつ引き出し続けても20年後に8856万円、全世界株式は4297万円が残っていました」

 

 同じく94年から年180万円ずつ引き出し開始で当初3千万円のS&P500は20年後に1億3283万円、全世界株式は6445万円の残高。

 

「97年引き出し開始から雲行きが怪しくなります。当初2千万円のS&P500は20年後の17年に276万円、全世界株式は400万円。99年引き出し開始の場合、S&P500も全世界株式も17~19年間で20年より早めに資産が枯渇しています」

 

■暴落をまたぐと枯渇

 引き出し始めた前半~半ばの頃、リーマン・ショックに見舞われた場合は資産が20年持たず、ゼロになっていたわけだ。なお、預金から同様に引き出した場合は17年でゼロになる。こう書くと、「相場がいい年も悪い年も同じ金額を引き出すのはよくない。『残高の3~4%』など『率』で引き出す検証じゃないと」という反論も来そうだ。率で引き出す場合、運用資産数千万円では大幅下落の年が「続くと」キツい。労働を増やすか、さらなる節約が必要になる。

 

リーマン・ショックの際、S&P500は1年4カ月下がり続け、元の水準に戻るまで5年5カ月。全世界株式は6年8カ月かかりました。暴落時に備えるなら、リスク資産以外に5年分の生活費を預金などで持っておきましょう」(横田さん)

 

 実際に早期退職したばかりの人にも話を聞きたい。23年7月、東証プライム上場のIT関連企業を40代で早期退職、「FIRE宣言」をした九条さんに取材した。明言を避けたが、億単位の資産で会社を辞めた様子。現在はフリーとして仕事を受ける日もあれば、ギャラ無しでイベントの手伝いをする日もある。

 

■年間生活費の20倍

 九条さんは30代前半で資産2千万円に到達した。「その頃は仕事が楽しく、忙しく、早期退職なんて1ミリも考えなかった」と当時を振り返る。

 

「40代の早期退職に必要なお金は『自分の年間生活費の20倍』と考えていました。年300万円で暮らせるなら6千万円。500万円で暮らせるなら1億円、という感じです」

 

 本稿前半で横田さんが例に挙げた、年170万円で暮らす人なら3400万円ということに。

 

「ここ5~6年は、何に投資しても上がる相場だったので、下げ続けるときの怖さを本当の意味でわかっていない人がいるかもしれません。ちなみに20年のコロナショックなんて、暴落のうちに入りません(笑)」

 

 FIREに憧れる人がいる風潮を、FIREした本人(九条さん)はどう感じるか。

 

「うーん。FIREなんてね、負け組なんですよ」

 

 無理にへりくだっているわけでなく、自然な様子でそう言う。

 

「社会や組織に属すれば、給料や今年の売り上げ、利益……何かしら競争があります。早期退職は、そういう勝ち負けの土俵から降りることなんです。もう、何も気にしなくていい。数字もノルマもない。自由。そこが根幹だと思います。働いている人より偉くもないし、必ずしも憧れるようなものでもない」

 

 FIREを冷ややかに見る人がいるのは、ある意味負け組なのに、必要以上に「すごいこと」として語る人がいるからかも。

 

 資産数千万円で早期退職して楽しく暮らしつつ、自由に働く(働かない時があってもいい)ことはサイドFIREと呼ぶらしい。言葉は格好いいが、一般的な言葉で置き換えると「セミリタイア」「脱サラして週2~3回は働いている人、または無職(所得がない)」となる。

 

「ただ、資産数千万円で会社を辞めることを否定はしません。辞めてみてもいいと思いますよ。僕自身、束縛から抜けたときの自由な気持ちは最高でした」

 

(1級FP技能士・古田拓也、編集部・中島晶子)

 

AERA 2024年2月19日号