投資戦略 損益通算と米国債 (2022年7月25日)

【まとめ】

・目的・ポートフォリオの状況により、追加リスクを取らずリターン拡大のチャンスに挑める。

・損益通算を使い、税金還付により米国債投資における利益を拡大できる可能性がある。

・9月のFOMC後、残存期間が2年前後の米国国債を購入予定!

 

米国(FRB)はインフレ対策への強いコミットメントを示し、

継続的な利上げが見込まれている一方、

行き過ぎた利上げが経済を鈍化させ、

早々に金融緩和に戻るのではという見方が増えている。

 

いつ利上げをやめるのかは誰にもわからないが、

歴史を見る限りにおいて「利上げ⇒景気悪化⇒金融緩和」を繰り返している。

日米の為替は米国の金融政策の影響を強く受け、

米国の金融緩和時において基本円高基調になる。

 

現在の円高は日米金利差によるものと考えている。

そして2年以内に現在の水準よりは円高に進んでいるだろうと予測している。

 

【投資戦略】

・利上げにより投資妙味が出てきた米国債保有している米ドルで購入。

・購入するのは、既発債でアンダーパー(※)の残存期間が2~3年もの。

※額面より安い価格で売られているもの。

・償還時に為替差損により償還差損が出ることを期待して投資する。

・償還差損を使った損益通算による税金還付を狙う。

 

なお、前提として、私は、ドル投資からのリターンはドルで保有するスタンスであり、

一定の配当収入が見込まれる状況である。

 

為替が上記のシナリオ通りに行くのであれば、

金利上昇により割り引かれた価格の債券を購入しても、

円安時に購入し、円高時に売却した場合、円ベースでは「譲渡損」がでることがある。

 

毎年の利息に加え、ドルベースでの償還差益を非課税で受領できる上に、

円での税金還付を受けることができる。

また、仮に、円高にならかった場合は、

通常通りのリターンになるだけの話なので、

損をすることはない。

自分にとってはアップサイドしかない取引と言える。

 

このように、投資目的とポートフォリオの状況によっては、

追加でリスクを取ることなく期待リターンを上げる方法もある証左である。

他にも似たような投資先がないか探していきたい。

 

【例】

額面 : $10,000分  (償還金額:満期に受け取る金額)

購入価格: $9,700 (購入金額)

為替: (購入時) $1=135円 

 

上記の例の場合、ドルベースの場合、償還時に償還差益$300が発生するが、

もし、購入時の為替が$1=135円で、償還時に$1=115円まで円高が進んだ場合、

234,500円(1,115,500円-1,350,000円=△234,500円)の償還差損が発生する。

 

その年に、234,500円以上の上場株式等からの配当や譲渡益がある場合、

上記償還差損と「損益通算」することができ、

結果約47,000円の税金還付を受けることができる。

 

償還時の為替が購入時の$1=135円と同じだった場合、40’500円($300×135円)の償還差益が発生し、約8,100円(40’500円×20%)の税金が源泉徴収で引かれるはずが、

為替差損が発生する上記の例では税金還付を受けられる。

 

【仕組詳細】

・債券と金利の仕組み:

債券(既発債※)の価格と金利は逆相関の関係にある。

金利上昇局面において、すでに発行されている債券の価格は下落する。

※既発債:すでに発行されている債券

 ご参照(債券価格):別エントリー)

 

債券の利息水準が現在の金利水準(他の債券)よりも低いと誰も買わず、

金利水準の利回りと同等のリターンになるよう債券の価格が下落する。

 

例えば、3年前に0.6%のクーポン(利息)を支払う条件で発行された5年債(残存期間2年)は、

今の2年金利と同水準のリターンが得られるように債券の価格が下落する(例:$100の額面で売られていた債券が、$99.78で販売される)。

額面より安く買った債券が、満期において満額(額面)で償還されることで、

利息に加え償還益が得られるようになり、

結果として現在の金利水準と同程度のリターンが得られるようになる。

 

・税金:

日本において米国債(株式も同様)に投資した場合、

①配当を受領した際、②有価証券を売却し譲渡益が発生した際、

日本において課税される。

ポイントは、課税対象となる利益は円ベースのものになる点である。

 

外貨建の有価証券に投資をした場合、

受領した利息は、その時の為替に基づいた円ベースでの金額、

譲渡益に関しては、購入時における円ベースでの購入価格と売却時の円ベースでの差額で計算される。

 

 

【損益通算例】

上場株式の配当からの収益は、上場株式等の譲渡損(売却損)と損益通算(※)できる。

例えば、特定口座において(※)、A、BおよびC株式からの配当収入が20万円ある場合、

源泉徴収で約4万円((税率約20.315(2022年7月現在))税金が控除される。

上記配当受領後に、同口座において保有していた上場株式等を売却し、

10万円の譲渡損益が発生した場合(例:1株2,000円で100株購入した株を1,000円で売却)、

配当収入より得た20万円から当該損失10万円を控除する形で、

税金が再計算される。

今回の例の場合、すでに源泉徴収されていた税金4万円のうち約2万円が還付される。

※確定申告すれば一般口座もしくは異なる証券会社の口座でも損益通算は可能

 

ご参考:(日興証券):https://www.smbcnikko.co.jp/service/tax_sys/stock/tsuusan.html

 

上記の例の場合、2万円の税金還付があるとはいえ、

株式売却により10万円損失を出しているのであまり魅力的な内容ではない。

 

損益通算は、損失を軽減するための一つの手段でしかない。

※今後上昇が期待できない資産に投資することは、機会損失であるため「損益通算」は投資において大事な投資ツールである(より投資妙味がある投資先に振り分けるべき資金を使われているため)

 

米国債利回り:2022年7月25日時点