投機と投資:マーケットに居続けることの意味

【まとめ】

  • ギャンブル・投機・投資は類似点もあるが、異なるゲームである。
  • 「ゼロ(マイナス)・サム」ではなく、「プラス・サム」ゲームに参加すべし。
  • 会計・金融・経済などの専門分野における知識・技能を磨き、
    予想精度向上に努めるべし。
  • 余裕資金を持ち、市場から退場しない!

 

投資を危険なギャンブルだと考え、
投資する人を見下したり、投資で資金を増やした人を認めない人がいる。

「投資」が危険な「ギャンブル」のように見えるからかもしれない。
(ただ、面白いのは、そういう人の中にも宝くじを買っている人がいる。)

「投資」は、ギャンブルと同じなのか?
「ギャンブル」、「投機」、「投資」をリターンの観点から比較してみた。

 

①ギャンブル
ギャンブルは、胴元がおり、「偶然性のある事象」にお金を賭けて、
勝った者が配分を受ける。

ただし、賭金総額から胴元が手数料を引いた後の金額になるため、
勝者が受け取る金額は、参加者の賭金総額ではない。

ギャンブルの典型例と言えば宝くじである。
宝くじを買うとお金持ちになれるかもしれないという「夢」を見られ、
楽しい気持ちになれるので、それに支払う費用だと思えば良い商品なのかもしれない。
「運」の要素が大きく、努力等が入り込む余地が少なくコスパが良いともいえる。

ただ、理論上、宝くじは買った瞬間にその価値が半分になる。
賭け金(購入額)総額より少ない金額(還元率50%未満)が配分される仕組みだ。
※宝くじの当選金額総額は、購入者が支払った金額の合計の半分にも満たない。
 (ご参考:https://www.takarakuji-official.jp/about/proceeds/top.html

全体でみると、利益より損失の方が大きい「マイナス・サム」ゲームであり、
(確率論で考えると)購入し続けるといつか必ず損をする。

ちなみに、競馬の還元率は70~80%。
宝くじよりは高いが、やはり「ゼロ・サム」ゲームですらない。

 

②投機
「投機」は、文字通り、「機会」に資金を投じて利益を得ることを目指す。
短期間に対象資産の値動きを予想し、利益を上げる(差益で儲ける)。

「安い時に買い、高い時に売り(高い時に売り、安い時に買い戻し)」利益を得る。
短期間での資産価値変動のサヤを抜くことで儲けを狙うため、
対象資産の価値の増減を投機家は気にしない。
(予想通りに価格が変動すればよい。)

したがって、対象資産の価値(利益のパイ自体)が大きくならないため、
誰かの儲けは、他の誰かの損になり、「ゼロ・サム」ゲームになる。
FXや株式のデイトレードは手数料が比較的小さく、「ゼロ・サム」と言われている。

 

参考:Speculator (投機家)
https://www.investopedia.com/terms/s/speculator.asp

 

③投資
投資は「長期的な観点」でビジネス(事業)に出資(資金を投入)し、
そのビジネスが成長することによる利益を獲得することを目指す。
対象資産の価値が長期的に上がっていくことを想定して投資する。

株式投資であれば、長期的に見て有望だと考える企業にお金をつぎ込む。
短期的には株価が上下に変動しても、投資先企業が成長し、
企業価値を高めることで株価が上がる(キャピタル・ゲイン)および、
配当(インカム・ゲイン)に期待してお金を投入する。

経済成長とともに投資対象資産(企業など)の価値は上昇すると考えるため、
「投資」は、「プラス・サム」ゲームと言われている。

ギャンブルや投機と異なり、利益全体のパイが大きくなる投資は、
参加者全員が利益を享受できる可能性があることを意味している。

ただ、「投資」にもギャンブルに似た要素はある。

例えば、株式投資を行う際、
現在の株価とその理論価値を比較し、
理論価値の方が高い(将来性がある、将来儲かる)と思う企業の株を購入する。

現実世界において理論値と実際の株価は通常乖離している。
長期的にみるとその理論値に収斂していくと考えられているからこそ、
理論値より割安な株式に投資し、大きな利益を狙うのである。

問題は、

①そもそも正しい理論値がわかるのか?
②いつその理論値に収斂するのか?

である。

株式の理論価格(※)は、企業のビジネスモデル、競争環境および経済環境など加味し、算出される。
※理論上、企業が将来生み出すキャッシュ・フローの総額を現在価値(※)に引き直した価格
1今後得られる利益の現時点での価値を表す指標(例えば、現在の100万円は、100万円に金利が付くため、1年後の100万円ではない。将来の「100万円+利息」が現在の100万円(現在価値)と等価である。)

しかしながら、企業が将来生み出すキャッシュ・フロー(収益)がいくらになるかは、
分析する人により異なる。現在価値に引き直す際に使う金利(割引率)も同様である。

どの値を使うのかで理論価格は大きく変わってくる。

仮に、正しい理論価格が算出できても、想定外のことは起こる。
2001年9月11日の同時多発テロや2013年東日本大震災後の原発問題など、
不測の事態により将来の見通しが変わる際、企業評価は大きくブレてしまう。

確実にわかる未来などない。
理論価格がいくらなのか、
いつ理論価格に収斂するのか?
正確なことは誰にも分らない。

投資家が各々の異なる理論価値に基づき投資をしているからこそ、
仮に適切な理論値がわかったとしても、
株価がその価格にいつなるのかは誰にも予想できない。
投資も偶発性の影響を受ける。

どこまで確度を高めても将来の利益は「確実」にはならない。
ただ、確率通りの結果に収斂するようにサイコロを振り続けることが大事なのだ。

サイコロを3回振って連続で「6」がでることはまれにあっても、
100回連続、1万回連続で「6」が続くことはほぼない。
振る回数を増やせば、すべての数が均等に17%程度の確率で出てくるはずだ。

経済・企業分析などにより統計的に勝つ確率を上げながらも、
未来は誰にも見通すことはできないという「謙虚さ」を持ち、
不測の事態に対応できるだけの「余裕資金」を持つことで市場に留まることができる。

(経済見通しが悪い時など)確率が芳しくないときは、
究極的にはマーケットから退出することなく、
サイコロを振り続けることが大事なのだと日々自分に言い聞かせている。

1回で完結する多くのギャンブルと異なり、
投資は、「プラス・サムゲーム」であり、
投資資産が存続する限り継続するゲームだからこそ、
未来に希望を持ち、長期的視点をもって投資を続けられるのだと思う。

 

 

参考:
宝くじ公式サイト:収益金の使い道と社会貢献広報
https://www.takarakuji-official.jp/about/proceeds/top.html